中古住宅の売買に関しては、建物状況の劣化や不具合など、気になる部分も多いでしょう。そこで、売り主や買い主が少しでも安心して売買交渉をするために、注目されているものが建物状況調査(インスペクション)です。
そこで今回は、インスペクションの検査方法や検査方法、目的、法制度についてご紹介します。
インスペクションとは?
インスペクションとは、建築士や「既存住宅現況検査技術者」の資格を持った専門家が行う住宅調査です。
住宅の状況を正確に把握するために欠かせない調査ですが、実施する業者ごとにサービスの品質にバラツキがあるという問題を抱えていました。そのような課題を解決するために、国土交通省は平成25年6月に「既存住宅インスペクション・ガイドライン」を公表。インスペクションの定義や実施目的、検査方法などをとりまとめ、正しい住宅状況調査のあり方を周知しました。
検査項目
ガイドラインによると、検査項目は次の通りです。
- アリによる被害、腐食、傾斜、柱や壁のひび割れなど建物耐久上の安全性にかかわる部分のチェック
- 雨漏りや漏水箇所の点検
- 給排水管の漏れや詰まりなど、日常生活に支障をきたす可能性がある配管のトラブル箇所をチェック
検査は基本的に目視で行われ、補助として簡易的な計測機器が用いられます。必要があれば、検査精度の向上を狙って電磁波レーダなどの専門性の高い測定機器が使用されます。
インスペクションの目的
既存住宅の売買は個人間で行われることが多いため、大小さまざまなトラブルが想定されます。インスペクションを実施する大きな目的は、物件の安全性を担保してスムーズな売買交渉につなげること。そして、住宅の問題点を把握して快適な住環境を維持することの2点に集約されています。
物件の安心購入につながる
住宅の劣化状況や施工の不備、外壁や屋根裏の詳細な状況などは、住宅設計やその構造に精通した専門家でなければ正確に把握できません。特に中古住宅を売買するケースでは、住宅の状態を専門家の調査のもと正確に把握して、それぞれ情報を共有することが、安全・安心の取引につながります。
住宅の問題点を把握し、適切なリフォームにつなげる
インスペクションは、新築や中古住宅の購入時のほか、入居の現段階調査でも適用されます。
設備の耐久性能には大まかな目安があります。しかし、使用状況によっては寿命を迎える前に取り換えを行うことや、大がかりな補修を必要とするケースもあるでしょう。その判断は、専門知識を持った建築士や診断士でなければ務まりません。
適切なタイミングでリフォームにつなげることもまた、インスペクションを実施する大きな目的です。
「改正宅建業法」で変わるインスペクション市場
現在、数多くの業者がインスペクションに関するサービスを提供しています。しかし、それについての法的根拠はなく、あくまでもガイドラインに沿って行われるものでした。
2018年4月に「改正宅建業法」という法律が施行されることによって、インスペクション市場は新たなステップを踏み出すことになります。主な改正点は以下の3つです。
改正される3つのルール
- 宅建業者がインスペクション業者のあっせん可否を示し、媒介契約者の意向に応じてあっせんする(媒介契約締結時)。
- 宅建業者がインスペクションの結果を買い主に対して説明します(重要事項説明時)。
- 物件の現在の状況を売り主と買い主が相互に認識する。その内容を宅建業者から売り主と買い主に書面にて交付する(売買契約締結時)。
この法改正により、インスペクションの実施内容について、明確に説明する義務が生じることになります。しかし、今回の改正はインスペクションの実施自体を義務付けたものではありません。
現在は、全国展開している大手不動産会社のみならず、地元の不動産会社の中でもインスペクションをサービスとして実施しているところがあります。そのため、今後は一般の消費者に広く認知されていくでしょう。
おわりに
今回は、インスペクションの検査方法や検査方法、目的、法制度についてご紹介しました。
建物状況調査(インスペクション)は、検査項目や検査方法など国土交通省が定めたガイドラインに沿って行われるため、業者間で費用や品質の大きなバラツキは少ないでしょう。制度環境が整っているところも利用しやすいポイントの1つですね。
建物の状況を正確に調査し、個人間の売買交渉や意思決定をスムーズに運ぶためにも、住宅のプロによるインスペクションは重要な意味を持ちます。今後、法改正もあり、中古住宅の売買取引におけるスタンダードな調査として、一般的になっていくことが予想されます。
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