日本人なら誰もが知っている国民的アニメ「ドラえもん」。皆さんは、のび太とドラえもんが住む家がどこにあるのか、考えたことがありますか?
実は漫画には「練馬区月見台すすきヶ原」という住所が登場します。
はたして、この町は実在するのか?そして、その家の地盤は大丈夫なのか!?今回は、のび太とドラえもんが住む家の地盤を徹底検証してみました!
ドラえもんとのび太が住んでいるのは、こんな街。
原作の地図と郵便番号から住所を特定
原作15巻(『不幸の手紙同好会』)には、スネ夫の家の住所は練馬区月見台すすきヶ原3-10-5とあり、のび太の家も同じ地域と考えられます。この住所そのものは架空ですが、原作24巻(『虹谷ユメ子さん』)に登場する郵便番号(5桁時代)176-00から、現在の「練馬区桜台」がモデルとされています。
町のイメージは、作者の出身地である富山県高岡市や実際に住んでいた川崎市多摩区生田などを組み合わせたものと考えられますが、ここでは実在する練馬区桜台にスポットを当てて、地盤調査を進めていきます!
モデルになった練馬区桜台とは?
練馬区桜台は、武蔵野の面影を残す街。石神井川や桜並木、大きな公園など、身近な自然にも恵まれながら、西武池袋線でターミナル駅の池袋まで9分。都内各方面へのアクセスもよく、都心の便利さと自然とのバランスが良い、住みやすい街といえそうですね。周辺には練馬市役所、練馬区文化センター、さまざまなオフィスや金融機関が集まり、区の中心部としての顔も持ち合わせています。
資料で地盤の状態を調査
まずは資料からのび太とドラえもんの家を調べていきましょう。ここでは以下の3つの視点で調査を行います。
- 標高図から家の場所を特定
- 過去の記録から地盤を探る
- 地形断面と地質図から地下を探る
1. 資料調査で台地か低地を確認
地盤調査にあたって、のび太とドラえもんが住む家を練馬区桜台の色別標高図で特定!
詳細な番地が不明なので、桜台3丁目の家のマークの位置(以下家のマーク)にドラえもんの家があったと仮定しました。その理由として、原作では近くに「多奈川」という川があり学校に裏山があるからです。でも、川の登場頻度は低く、住んでいる家から少し離れていると考えられるため、この場所を選びました。
地図上で特定した点を色別標高図と3D画像で確認してみると、家のマークは桜台3丁目の大部分を占める高台にあることが分かります。
2. 過去の記録から地盤を探る
古地図と航空写真で昔の様子を見る
現在の練馬区桜台は、住宅街として栄えていますが、過去はどんな地域だったのでしょうか。古地図(旧版の地形図)と1936年に撮影された航空写真から、植生や土地の変化を見てみましょう。
家のマークがあるエリアの高台(台地)の道路沿いにはすでに住宅があり、古くから集落として利用されてきたことが分かります。
過去の地震被害は?
次に過去の地震被害を探ってみました!近代に起きた東京の大地震といえば関東大震災。当時の練馬は東京市内ではなく、北豊島郡に属する農村地帯です。人口も少なく、震災調査会の報告書(大正12年)『関東大震災情況全図:海陸実地踏査』に「軽微な被害」という書き込みを確認できます。
ちなみに関東大震の被災者がこのエリアに移住して人口が増加し、今の練馬区の発展につながったとか。大きな被害がなかったということから、練馬区は「地盤が良さそう」という仮説が立てられそうですね。
3. 地形断面と地質図から地下を探る
地形断面図と地質図を作成
次は、地図上で特定した家のマークの地盤を詳しく見ていきます。
最初に「地形断面図」を作成。地形の断面図から詳しい高低差を見ていきます。桜台の地図a上で、河川から桜台3丁目の中央部分を通過するように地形断面図を作成してみました。
下図を見ると、桜台3丁目の大部分(B、E)は比較的標高が高く、起伏の少ない平坦面であることが分かります。その他、河川の横や平坦面の間に低地(A、C)が存在しています。また、台地の側面が低地側へと下っている斜面(D)もあります。
下図は、練馬区桜台の地質図bです。グリーンゾーンは「段丘堆積物」でできています。
一般的にかつての河川に堆積した礫層から構成されており、良好な地盤の可能性が高いと考えられます。グレーゾーンは「谷底平野・山間盆地・河川・海岸平野堆積物」などでできています。泥質の堆積物が卓越して堆積しており、弱い地盤の可能性が高いと推定されます。家のマークは「段丘堆積物」に該当しています。
土地条件図から土中を探る
資料調査の最後は、「土地条件図」から土地がどのような層なのかを判断します。
オレンジゾーンは台地・段丘エリアです。家のマークを含めて、桜台3丁目の大部分はこのエリアです。比較的標高が高く、起伏の少ない平坦面。この地域の台地・段丘エリアは、関東ローム層と呼ばれる火山灰土で覆われており、良好な地盤の可能性が高いといえます。
ドラえもんとのび太の家の地盤調査を実施!
3つの地盤調査から推測
いよいよ現地の地盤調査結果を見ていきましょう。ジャパンホームシールドは、累計200万棟以上の地盤調査を行っています。今回のエリアでも多くの調査実績があるため近隣のデータから地盤を推測します。
ジャパンホームシールドでは一般的な「ボーリング調査(標準貫入試験)」「スクリューウエイト貫入試験(「SWS試験」に加え、「スクリュードライバーサウンディング試験(SDS試験)」と呼ばれる高精度な調査方法を採用し、3つの地盤調査を行っています。
1. ボーリング調査(標準貫入試験)
ボーリングで地面に8cmほどの穴を開け、そこにサンプラーと呼ばれる鉄の筒状の部品を挿入し、サンプラーの上からハンマーを所定の高さで落下させて、ハンマーによる打撃が何度要したかで、強度を測定する方法です。主にビルやマンションの建築の際に用いられる手法です。
ボーリングの近隣データ
表土の下に関東ローム層が厚く堆積しています。関東ロームは住宅地盤として概ね良好な支持力を有している土なので、良好な地盤の可能性が高いといえます。
2. スクリューウエイト貫入試験(SWS試験)
鉄の棒(ロッド)にドリル状の部品(スクリューポイント)を取り付け、おもりで荷重をかけ、そこからスクリューポイントを回して、地中に貫入させていく調査方法です。一般の戸建住宅において、最もよく利用されている調査方法です。
SWSの近隣データ
表土の下に回転層(荷重1.0kN以上の層)が厚く堆積しているので、良い地盤である可能性が高いといえます。
3. スクリュードライバーサウンディング試験(SDS試験)
従来のスクリューウエイト貫入試験(SWS)では「ジャリジャリ」などの音で土質(砂質土・粘性土・盛土)を推定していました。スクリュードライバーサウンディング試験(SDS試験)では、トルクなどのパラメーターや地形条件、近隣のボーリングデータなどを参考に、土質の推定精度を高めることに成功。土の種類を知ることで、地盤の強さがより正確に判断することができます。
SDSのデータ
ボーリングデータと同じく、表土の下に関東ローム層が厚く堆積しています。関東ロームは住宅地盤として概ね良好な支持力を有している土なので、良好な地盤の可能性が高いといえます。
調査から導き出された結論は?
地盤調査のまとめ
ここまで見てきた資料調査と地盤調査の結果を下図にまとめました!導き出された結論は、家のマークの高台にドラえもんの家があれば「良い地盤」の可能性が高いとなりました。
3D画像 | - |
地形断面図 | - |
地質図 | ○ |
土地条件図 | ○ |
旧版地形図 | ○ |
旧航空写真 | ○ |
近隣データ(ボーリング) | ○ |
近隣データ(SWS) | ○ |
安心のジャパンホームシールドのサポートシステム
今回のドラえもんの家の地盤調査では「良い地盤」の可能性が高いという結果ですが、もし建築予定地が「弱い地盤」と判断されても、ご安心ください!
家や建物を建てる前に地盤の改良工事を行うことで補強できます。このように地下の状態を把握せず、「弱い地盤」に家を建てて地盤沈下で家が傾くことがないように、建てる前の地盤調査は不可欠です。
ジャパンホームシールド(JHS)では、安全・安心な家づくりのために、地盤サポートシステムを提供しています。累計200万棟におよぶ地盤解析実績から得られたノウハウをもとに、精密な調査と地盤解析を行い、信頼性の高い評価を行います。評価に基づき、安全面はもちろんコストにも配慮した対策方法を提案。万が一の事故に備えて、長期の品質保証制度もご用意しています。
参考資料
・ドラえもん15(https://shogakukan-comic.jp/book?isbn=9784091401052)
・ドラえもん42(https://shogakukan-comic.jp/book?isbn=9784091416629)
・検証・「のび太の町」を再現 ―モデルとなった町はどこにあるのか―(https://www.hatosan.com/ensoku/2011/05/post-27.html)
ジャパンホームシールドは戸建住宅の地盤調査・解析、住宅検査を手掛ける企業です。 累計200万棟を超える地盤調査・解析実績は国内No.1。 住まいの安全・安心を追求し、住まいづくりに役立つ情報を発信いたします。