液状化は、地震発生時に起こる可能性がある被害です。地盤が液状化すると、地盤沈下や噴砂、陥没が起こり、建物が傾斜してしまう恐れがあります。また、マンホールや埋設管などの 浮き上がりの被害が発生することもあります。
土地の購入を検討している方には、どんな場所で液状化が起こりやすいのか知っておくことをおすすめします。そこで今回は、液状化の可能性がある土地についてご紹介します。
液状化とは?
地下水に浸った緩い砂地盤が、強い地震動によって地盤が一時的に強度を失い、液体のように流動化することを「液状化」といいます。ひとたび液状化が起こると、地盤沈下によって、地下の埋設物が損壊したり、建物が傾斜・沈下してしまいます。
液状化が起こる条件とは?
地盤の液状化は次の3つの条件が揃ったところに、 ある程度の大きさの地震の揺れが加わり発生します。
- その土地に砂が堆積している(砂質土)
- その砂が地下水に浸かっている(地下水位が高い)
- その砂がゆるい状態である(n値が20以下)
逆に、粘土層や砂礫層(砂と小石を含む地層)などの硬質な地質の地盤や、地下水位が低い箇所では起こりにくいとされています。
液状化の引き金となるのは震度5以上が目安とされ、マグニチュードが大きいほど影響範囲も広くなります。また、揺れの長さ(時間)も影響します。
液状化現象のメカニズム
通常、砂の粒子は緩く結合しあっていて、その隙間に水が含まれています。
しかし、地震などの揺れによって砂粒同士のかみ合わせが外れ、水や空気中に浮いた状態になります。そしてバラバラになった砂粒は沈下・再堆積し、水や空気だけが上に移動します。
地盤の中の水が上に抜け、砂粒の配列が密になった分、地盤の体積が減少して、地表面が沈下・陥没などの変形を起こします。また、抜け出した水や砂が噴き上がる、噴水・噴砂といった現象も見られます。
粒径(大きさ)が揃っている砂は圧力によってかみ合わせが外れやすいことから、砂質土は液状化リスクが高いとされているのです。
液状化の被害
地盤が液状化を起こすと、電柱などの重い構造物や杭を打っていない住宅などが地盤と共に沈む(不同沈下)、水より軽い埋設管やマンホールなどが浮き上がるなどの被害が発生します。
液状化現象はゆっくりと進むため、建物が倒壊して下敷きになるといった人的被害は少ないとされています。しかし、沈下により建物の大規模な修繕が必要となる、住宅に住めなくなるなどの問題が起こり得ます。
液状化の可能性のある土地とは?
先述の液状化3条件を踏まえて、液状化を起こす可能性がある土地の特徴を具体的にご紹介します。
埋立地などの比較的新しい土地
比較的新しい土地とは、造成後年月が経過していない埋立地のことです。
2011年の東日本大震災の影響で起きた千葉県浦安市の液状化現象では、50~60年以内に造成された比較的新しい土地での液状化被害が目立ちました。
工法や土質、造成によって地盤の硬軟は左右されますが、比較的新しい土地で液状化が起きる可能性があることは把握しておきましょう。
旧沼地・旧池
もともと沼や池であった土地は、液状化現象が起こりやすいといえます。湾岸沿いだけでなく、内陸でも液状化は起こります。沼や池を埋め立てた土地は、地下水位が高く水で飽和されていることが多く、埋め立てに使われた土や地盤の締まり具合によっては、液状化の発生条件にあてはまることがあるのです。
比高の小さい自然堤防、旧河道など
自然堤防や旧河道などは液状化が起こる可能性のある土地です。
自然堤防とは、洪水によって運ばれた砂やシルトが堆積して生まれた地形です。旧河道とは以前に川が流れていたところのことです。 河川は自然に流路が変わることがあるのです。 人工的に流路を変更することもあります。 旧河道は地下水位が高く、地盤は川によって運ばれた砂で構成されていることが多いので、液状化リスクがある地形といえます。
大河川の沿岸
大河川の沿岸、特に下流域は三角州などにあたり、自然堤防、 後背低地、旧河道からなります。全体的に地下水位が高く、 地盤の締まりは緩い傾向があるため、 砂質地盤のエリアでは液状化現象が発生する可能性があります。特に、川の合流部や屈曲部は過去に氾濫が多かった地帯のため、注意が必要な場所です。
1964年に発生した新潟地震では信濃川の旧河川敷で深刻な液状化が発生し、川岸町にあった4階建ての県営アパートが横倒しになるなどの大きな被害が生じました。
大河川の沿岸に土地の購入を検討している方は、地歴や、国や市町村から提供されている液状化危険度を示した 液状化ハザードマップで、その土地を調べてみましょう。
砂丘間低地
長年にわたって砂が堆積して生まれた砂丘は、主に日本海沿岸や鹿島灘、遠州灘沿岸などに分布します。砂丘の砂は同じ大きさの粒で構成されています。さらに、砂丘の裾や砂丘と砂丘の間の低地は地下水位が高く、液状化が起こりやすい場所です。
砂鉄や砂利の採掘跡地の埋め戻し地盤
砂鉄や砂利を採掘した跡地の埋め戻し地盤は、液状化が起こる可能性のある土地です。
かつて日本では、砂鉄の採掘が盛んに行われていましたが、砂鉄の採掘後、掘り起こした穴の締め固めをせず、周囲の土(砂)で埋め戻しを行っていました。そのため、砂鉄採掘跡地の地盤は緩く、地震が発生すると液状化が起こりやすいといわれています。
沢を埋めた盛土の造成地
一般的に丘陵地帯は液状化現象が起こりにくいとされますが、丘陵地の造成地には谷や沢を埋めた部分があるものです。谷や沢を埋め立てた盛土の造成地は、液状化が起こる可能性のある土地です。
実際に東日本大震災では、沢を埋めた盛土の造成地で噴砂(地震の震動によって表層の砂質土が噴出する現象)が確認されました。
土地の液状化リスクを判定するには?
液状化リスクは、地形の特徴などから概略を見極め、さらにボーリング調査・標準貫入試験などで詳細に調べることで判定します。
たとえば、国土交通省は地形区分(土質の情報も含めた微地形区分)による相対的なリスクを以下のようにまとめています。
液状化発生傾向の強弱 | 地形分類 |
5(強) | 埋立地、砂丘末端緩斜面、砂丘・砂州間低地、旧河道・旧池沼 |
4 | 干拓地、自然堤防、三角州・海岸低地 |
3 | 砂州・砂礫洲、後背湿地、扇状地(傾斜<1/100)、谷底低地(傾斜<1/100)、河原(傾斜<1/100) |
2 | 砂丘(末端緩斜面以外)、扇状地(傾斜≧1/100)、谷底低地(傾斜≧1/100)、河原(傾斜≧1/100) |
1(弱) | 山地、山麓地、丘陵、火山地、火山山麓地、火山性丘陵、岩石台地、砂礫質台地、火山灰台地、礫・岩礁 |
(注意 : 水部(河道、湖沼)については、陸部がないことから液状化の発生傾向を評価しない。)
出典:国土交通省「地形区分に基づく液状化の発生傾向」より一部改変
他にも、国土交通省と国土地理院が運営している「ハザードマップポータルサイト 重ねるハザードマップ」では、土地条件図や過去の地歴情報などを一括で参照できるため便利です。
また、高リスクゾーンに入っていたからといって必ずしも液状化が起こるわけではありません。新潟地震・中越地震・中越沖地震における液状化範囲を地形別に調査したところ、旧河道のうち実際に液状化した面積は全体の29.7%、埋立地で13.4%、盛土地で10.5%程度であったという報告があります。
土地の正確な液状化リスクを知りたい場合は、ぜひ詳細な調査を検討することをおすすめします。
液状化判定についての詳しい情報は、以下の記事も併せてご覧ください。
液状化リスクは軽減できる?
液状化対策として、地盤改良工事や支持力を高める杭を打ち込むなどして沈下リスクを下げる方法があります。主な対策は以下の通りです。
浅層混合処理工法(表層地盤改良) | 地盤の浅い部分にセメントの固化材を混ぜて強度を上げる。 |
深層混合処理工法(柱状地盤改良) | 深い地層まで円柱状の杭を形成して地盤改良する |
小口径杭工法 | 固い地盤まで杭(RC杭・鋼管杭)を打ち込んで沈下を低減させる |
CDP工法 | 地盤に貫入したケーシング(パイプ)から砕石を入れ、土へ押し込むことで締め固める |
他にも、ポンプなどで地下水をくみ上げて地下水位を下げる方法もあります。
おわりに
今回は、液状化の可能性がある土地の条件と具体例についてご紹介しました。比較的新しい土地(埋立地)や旧沼地、砂鉄や砂利の採掘跡地、などでは、土地の性質上、液状化を起こしてしまう可能性があります。
しかし、日本の平野部のほとんどは沖積層から成り、比較的新しい軟弱な地盤で出来ています。基本的に災害の多い国であることを踏まえ、特にリスクが高いとされる土地はあらかじめ避ける、リスクがあることが判明したら必要な防災対策を行うといった姿勢が大切です。
安全・安心な住まいを手に入れるためにも、土地の購入前には、入念な調査を行うようにしましょう。