住宅建設地の地盤が弱かった場合、建物を安全に支えるための地盤補強工事を行います。住宅の基礎となる地盤を、適切な状態にする工事が「地盤改良工事」です。
地盤が弱いと、時間が経過するにつれ地盤沈下が起こり、建物が倒壊する危険性が高まります。
地盤改良工事の必要性は、スクリューウエイト貫入試験などの地盤調査データをもとに判断されます。今回は、地盤改良工事の概要や工事が必要なケース、さらに依頼する時の注意点などについてご紹介します。
地盤改良工事とは?
1.表層改良工法
表層改良工法は、セメントを使用して地表周辺を固める地盤改良工事のことで、地盤の軟弱な部分が地表から2mまでの浅い場合に用いられる工法です。表層部の軟弱地盤部分を掘削し、セメント系固化材を土に混ぜて十分に締固めて強度を高めます。
2.柱状改良工法
柱状改良工法は円柱状に地盤を固めた改良杭によって建物を支える地盤改良工事のことで、軟弱地盤の深さが地中2~8mの場合に用いられる工法です。地中に直径60cmほどの穴をあけ、良好な地盤まで掘ります。地盤を掘る過程で水を混ぜたセメントを注入して土と混ぜて撹拌し、円柱状の固い地盤を築くことで強化する仕組みです。
3.小口径鋼管杭工法
小口径鋼管杭工法は、鋼管で地中から建物を支える地盤改良工事のことで、地中30mまでの地盤補強が可能です。地中深くにある固い地盤に鋼管の杭を打って、建物を安定させます。工事に掛かる日数も1~2日程度のため、短い期間で工事を終わらせたいという方にもおすすめです。また、小口径鋼管杭工法は狭小な土地など、重機を搬入しにくい場所での工事にも適しています。
地盤改良工事が必要なケースについて
一般的に、地盤改良工事が必要かどうかは、以下2つの条件から判断されることが多く見られます。
- 地耐力(地面が建物を支える強さ)が20~30KN/㎡以下の軟弱地盤と判断された場合
- 敷地とその周辺が埋め立て地や盛り土で造成された土地、過去に陥没があった土地、液状化や不同沈下の可能性がある土地など、総合的な周辺情報により地盤の強化を要すると判断された場合
つまり、地盤調査の結果と敷地周辺に関する情報を総合的にみて、地盤改良工事が必要かどうかが決まります。昔は、地盤調査をしなくとも住宅を建築できましたが、地盤の状態を確かめずに家を建て不同沈下が起こるなど、欠陥住宅の増加が問題になりました。
そのため、平成12年に「建築基準法」が改正され、「品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)」も制定されました。この法律の適用により、現在では地盤調査がほぼ不可欠です。品確法は、「基本構造部分の10年保証」「住宅性能表示制度」などを定めた法律です。
地盤調査をせずに土地や物件を購入してしまうのはトラブルの元です。土地を購入する前には、売主や不動産会社に交渉して、事前に地盤調査を必ず行ってから契約を結ぶようにしましょう。
地盤改良工事のメリットと注意点
地盤改良工事には主に3種類あることを説明しましたが、それぞれの工事について、メリットと注意点を解説します。どの地盤改良工事が自分のケースに最適かを判断する際にご活用ください。
表層改良工法のメリットと注意点
メリット
表層改良工法のメリットは、改良深度が浅い場合は比較的リーズナブルで、小型の重機でも施工が可能な点です。また、地中にコンクリートや石などが混入していても施工できる点も大きな特徴と言えます。
注意点
注意点は、勾配のきつい土地では施工が難しい場合があることです。また、地盤改良面よりも地下水位が高い場合は対応できません。施工者のスキルに依存しやすく、実績を積んでいないと仕上がりの強度に影響する点も気を付けたいポイントです。
向いている土地
表層改良工法に向いている土地は、勾配があまりなく、地下水位が地盤改良面よりも低い土地です。
柱状改良工法のメリットと注意点
メリット
柱状改良工法もまた、比較的リーズナブルで住宅の地盤改良工法として多く採用されています。また、支持層(強固な地盤)がなくても施工できる場合があるといった点もメリットです。
注意点
特定の地盤(有機質土など)では、セメントが固まらないといった固化不良が発生することがあります。また、施工後は地盤の原状復帰が難しい点は要注意です。将来的に土地を売りたい場合、価格の低下につながる可能性もあります。改良体撤去にはかなりの費用がかかるためです。改良体が残るので、解体後に別の建物を施工する際、工法の検討が必要になる点も気を付けたい点です。
また、狭小地や高低差のある土地では搬入不可となる場合もありため注意が必要です。
向いている土地
軟弱地盤で、不同沈下の可能性がある場合に用いられます。将来的に土地を売却するつもりがなく、住み続けると決めた土地なら撤去のことを考える必要がありません。
小口径鋼管杭工法のメリットと注意点
メリット
小口径鋼管杭工法のメリットは、施工後の地盤強度が他に比べて高い点です。また、3階建てなどの重量のある建物にも対応できます。
注意点
小口径鋼管杭工法は、支持層がなければ施工できません。また、場合によっては工事中の騒音や振動が大きい点もデメリットです。工事に入る前は、ご近所さまへの配慮は欠かせません。同じ条件で工事した場合、柱状改良工法より高額になる傾向があります。さらに、圧密沈下の大きい場所(新しい盛土造成地など)では、建物は沈下せず周囲の地盤が下がり、杭の抜け上がりが起こることがあります。
向いている土地
表層改良や柱状改良では対応できないケース、あるいはある程度狭い土地で、支持層がある土地に向いています。
地盤改良工事の費用の目安
表層改良工法
- 建物の規模 一戸建てレベルの規模です。
- 一般的な工期 対応する土地の広さにもよりますが、多くの場合1~2日で済みます。
- 一棟あたりの費用の目安 地域や広さ・改良深度などによって異なりますが、一般的な戸建住宅における費用は一棟百万円弱程度から百数十万円程度になります。
柱状改良工法
- 建物の規模 一般的な戸建て住宅に多く用いられます。
- 一般的な工期 改良杭の数が30本程度であれば2~3日で工事は完了します。
- 一棟あたりの費用の目安 地域や改良杭の本数、杭長によりますが、一般的な戸建住宅の費用は一棟あたり数十万円程度から数百万円程度になります。
小口径鋼管杭工法のメリットと注意点
- 建物の規模 一般的な戸建住宅に用いられます。
- 一般的な工期 条件にもよりますが、だいたい1~2日で完了します。
- 一棟あたりの費用の目安 地域や杭の本数、杭長などによりますが、一般的な戸建住宅の費用は一棟あたり数十万円程度から数百万円程度になります。
地盤改良工事を依頼する際の注意点
地盤改良工事を施工会社に依頼する場合、以下の3つの点に注意しましょう。
① 工事内容を必ず説明をしてもらい、依頼側もしっかり把握する
② 工事が済んだら、業者から地盤改良工事報告書を発行してもらう
③ 残土の処理する場合の費用について明確にしておく
特に、実際に行った地盤改良工事の内容をチェックし、知っておくことが大切です。施工会社は、建築に関しての専門家ですが決して任せきりにせず、見積もりから工事完了までの各過程においても把握しておきましょう。
また、地盤改良工事によって出る残土をどうするかの扱いについても、事前に明確にしておきたい点です。基本的には残土処理も施工会社に依頼し、費用は施主負担になりますが、費用面で別の解体専門会社に頼みたい場合もあるでしょう。ただ、何も決めずに全部残土を持っていかれてしまうと、建物の施工の際に困るというトラブルが発生することもあります。その場合は、どの程度残土処理をするべきかを施工会社に確認してから解体業者に頼みましょう。
おわりに
地盤改良工事の主な工法について、工事の具体的な方法と工期・コストなどをまとめて紹介しました。
ジャパンホームシールドでは、地盤調査で地耐力を確認したうえで資料調査も行いながら、地盤改良工事の必要性を判断しています。地盤改良工事は以前「表層改良工法」「柱状改良工法」「小口径鋼管杭工法」の3つが主流でしたが、最近ではさまざまな工法が存在します。長い間、安心して生活できる家づくりのためにも地盤を良好な状態に整えましょう。