近年では、新築住宅だけではなく、中古住宅需要も高まりを見せています。中古住宅の場合、新築住宅以上に住宅の劣化具合や、欠陥があるかどうかが気になるという方が多いです。住宅瑕疵保険や耐震診断などと同様にしっかりと安全性などを確認したうえで購入したいですよね。そういった要望を叶えることができる調査・検査として、「住宅インスペクション」というものがあります。いったいどのような調査や検査を行うものなのでしょうか。詳しくご紹介します。
住宅インスペクションの基礎知識
●住宅インスペクション(ホームインスペクション)とは
住宅インスペクションは、ホームインスペクションとも呼ばれています。インスペクション(inspection)は英語で「検査」の意味であり、日本語に訳すと建物状況調査ともなります。住宅インスペクションでは、既存住宅状況調査技術者などの住宅の検査を行う専門家が建物の診断を行います。欠陥などの不具合や劣化状況などの有無をチェックして、検査結果に対してのアドバイスをもらうことができるでしょう。
住宅インスペクションは、目視などを中心に行う検査であり、一般的に建物購入前に実施されることが多い傾向です。検査によって建物のコンディションを把握することで、中古住宅であっても安心して取引ができるようになります。
中古住宅では、劣化状況が売買価格に反映されているかということも、大きな購入ポイントとなるでしょう。国土交通省からも「既存住宅インスペクション・ガイドライン」が公表されており、住宅インスペクションが重要視されていることがわかります。
●住宅インスペクションが広まった背景
住宅インスペクションの認知度が広まってきている理由としては、2018年4月に施行された宅建業法の改正によるものです。この改正において、中古住宅の取引において、住宅インスペクションの説明が義務化されるようになったのです。
ここで勘違いしてはいけないのは、住宅インスペクションの実施が義務化されたのではなく、あくまでも説明が義務化されました。中古住宅を取引する際に不動産会社が行わなければいけないのは、主に次のような事項となります。
・中古住宅取引の媒介契約書に、インスペクターと呼ばれるインスペクション事業者を斡旋できるかの記載
・買い主に対して行う重要事項説明に、インスペクションの実施有無、実施している場合はその結果を説明
・売買契約の成立時において、建物の状況を当事者たちが確認していることを記載している書面の交付
このように、現在では住宅インスペクションを実施するかどうかは、買い主や売り主の自由です。このような背景で、住宅インスペクションについての認知度が高まったこと、また、中古住宅を購入する時に住宅インスペクションを依頼すれば、国の住宅ローン減税制度が使えるということで利用率が高まっている背景もあります。
●住宅インスペクションに関する資格
宅建業法改正前においては、主に建築士が住宅インスペクションを行っていました。しかし、2018年4月に施行された改正宅建業法では、インスペクション、つまり建物状況調査においては、「既存住宅状況調査技術者」という資格が必要となります。この資格の取得も建築士であることが前提条件となっています。
2017年に国土交通省では、「既存住宅状況調査方法基準」という資料を発行し、建物状況調査における人材育成などを行って、検査の質の確保や向上を推進しています。この基準に沿ったインスペクションを実施するために、「既存住宅状況調査技術者講習」などの制度が定められています。
そのため、住宅インスペクションは、この既存住宅状況調査技術者講習を修了した建築士だけが行うことができるようになっているのです。そして、当該建築士が、国土交通省が定めている「既存住宅インスペクション・ガイドライン」に則って、住宅インスペクションを行います。
住宅インスペクションを依頼するメリット
住宅インスペクションを依頼することで受けられるメリットについて、詳しくご紹介します。
●建物の状態がわかる
住宅インスペクションは、講習を修了した建築士が、住宅の状態を隅々まで調査してくれます。これによって、調査時点での住宅の状況を客観的な情報を手に入れることが可能です。買い手側としては、購入前に建物の詳細な情報を手に入れることができるので、知らないうちに欠陥住宅を購入してしまうといった状況を回避することができるでしょう。
また、建物の状態がわかることで、売り手側にもメリットがあります。自分自身が気付かないうちに発生していた劣化や不具合などを住宅インスペクションで発見することにより、売却後の買い主とのトラブルを避けることができるでしょう。また、住宅インスペクションをした結果、何も問題がなければ、築年数が古いことを理由にした値引き交渉などの際の大きな武器とすることもできるのです。建物詳細調査を行うことで、売り主にも買い主にも大きなメリットが生まれるでしょう。
●取引がスムーズに進みやすい
住宅インスペクションを事前に行っておくことで、取引がスムーズになるというメリットがあります。住宅インスペクションは、いわば第三者調査という形となります。購入しようと思っている住宅の詳細な状態を、第三者である既存住宅状況調査技術者が保証してくれるといっても過言ではないでしょう。住宅インスペクションを利用しない場合と違って、建物の状況に浮いて信頼性を増すことができるので、顧客の購買検討の際に障害を取り除くことができるのです。これによって、早期売買契約に結びやすくなるというメリットがあります。
●修繕が必要な箇所がわかる
買い手側の大きなメリットとしては、購入前から修繕が必要な個所をしっかりと理解して購入することができるということです。たとえば、小さな箇所であったとしても、雨漏りや水漏れがあった場合などに、長期間気付かなかったことで被害を防ぐことができます。また、中古住宅を購入する際には、リフォームをするケースが少なくありません。
リフォームに必要な費用や、逆にまだまだリフォームや補修の必要ない項目などがある可能性もあるでしょう。中古住宅購入の際にリフォーム料金の目安を詳細に知ることが可能となります。また、住宅インスペクションによって、住宅検査をすることで、今すぐ対応が必要というわけではないけれども、長期的な注意点として問題のある個所の報告を受けることができます。将来的な修繕計画を具体的に構築することができるというメリットがあります。
住宅インスペクションの診断項目
それでは、実際に住宅インスペクションでは、どのような項目を診断していくのか、詳しくご紹介します。
●外周りの状況
まず、外廻りの点検を行います。物件の外を回りながら、外壁や屋根の点検をしていきます。基礎や外壁などは、打診棒やクラックスケールなどを用いてひび割れなどを確認していき、屋根などは双眼鏡を用いて、瓦のずれやシミ、コケなどの付着具合を確認していきます。見落としの無いように複数の角度がからチェックしていきます。
●室内の状況
室内に入ったら、天井や壁などのヒビや破れ、シミなどがないか確認します。また、床のたわみや傾き、そして開口部などの立てつけや動作、傾きなどを確認。特に傾きなどは気付かないうちに問題が生じていることもあります。
●床下の状況
床下の点検は、点検口や畳を剥がして床下に入り込んで行います。基礎のひび割れやシミ、外部からの点検結果との違いなどを確認していきます。また、木造住宅の場合、特に確認しておかなければならないのが、シロアリなどの侵入被害がないかどうかということです。
●屋根裏の状況
屋根裏や小屋裏がある場合は、入り口などから内部を覗いて点検を行います。柱の状況や内部の壁のひび割れや劣化状況のほかに、雨漏りの有無やシロアリ被害の有無、金物などの状況などの確認を行います。
●水回りなど設備の状況
標準ではありませんが、キッチンや、お風呂、洗面、そしてトイレなどの水回りの点検もあります。設備がしっかりと稼働しているかの点検だけではなく、水漏れの有無や、換気扇などの電気設備が正常に稼働しているかなどのチェックもしてもらえるでしょう。
ジャパンホームシールドの住宅インスペクション
ジャパンホームシールド株式会社の住宅インスペクション(建物状況調査)では、ここまでご紹介してきたとおり、専門家が第三者の立場として、建物の状況を調査して、欠陥や不具合の有無を調査してもらうことができます。調査の際には、鉄筋探知機やレーザー墨出し器などの専門器具を用いて詳細な検査や計測をすることが可能です。
大まかな流れとしては、検査物件の物件情報をPCなどで登録すると、検査センターから日程調整の電話が入ります。そして、実際に建築士に検査をしてもらい、検査結果を後日報告書様式で、提示してもらえるでしょう。
基本的な住宅インスペクションサービスのほかに、オプションサービスとして耐震診断を行い耐震基準適合証明書の発行や、設備検査、雨漏り検査、既存マンション検査対応などを依頼することも可能です。目的や希望の調査範囲や点検個所に合わせて、自分に合った住宅インスペクションの調査内容を依頼できるでしょう。
住宅インスペクションで安心した取引を
住宅インスペクションとは、建物状況調査とも呼ばれており、住宅状況調査技術者などの講習を受けた建築士が、建物の欠陥や不具合の有無をチェックする点検のことを言います。2018年4月以降、中古住宅の売買において、住宅インスペクションについての説明が義務化されました。しかし、住宅インスペクションを依頼するかどうかは、買い主や売り主の希望によって異なります。住宅インスペクションへ依頼した場合は、第三者が適切に評価をしてくれるため、どちらにとっても大きなメリットがあるといえるでしょう。中古住宅の売買が生じる際には、利用を検討してみてはいかがでしょうか。
ジャパンホームシールドは戸建住宅の地盤調査・解析、住宅検査を手掛ける企業です。 累計200万棟を超える地盤調査・解析実績は国内No.1。 住まいの安全・安心を追求し、住まいづくりに役立つ情報を発信いたします。