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大阪湾のランドマーク 港大橋
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全長 980mの長大なトラス橋である「港大橋」。
竣工当時最新の技術が駆使された構造と耐震設計について評価され、二度の土木学会田中賞(作品部門)を受賞しました。
また、2024 年 9月には土木学会選奨土木遺産に認定されています。

そんな港大橋の魅力に迫ります。

大阪湾と港大橋

2025年に開催された大阪万博の会場は、大阪の街から海に突き出た埋立地である夢洲(ゆめしま)地区でした。

周辺の地図を見ると、夢洲に限らず、海の中にたくさんの四角い土地があるように見えます。つくられた時期は異なりますが、これらはすべ て埋立地です。

埋立地は、主に港や工場として利用され、それぞれの間には運河が通っています。そのため、大阪港や工業地帯には多くの橋が架けられています。

大阪は昔から「八百八橋(はっぴゃくやばし)」といわれるように、橋の多い街ですが、今でもその伝統は続いているようです。こうした多くの橋の中でも異彩を放つのが、今回ご紹介する「港大橋」です。

大阪湾岸の埋め立て地帯

港大橋とは

空撮_AdobeStock_539986834

港大橋は、大阪市港区と住之江区の埋立地を結ぶ、全長980mの高速道路橋です。

運河を渡る高速道路橋なら他の都市でも見られますが、この港大橋が特に注目されるのは、下に挙げるような特徴があるからです。

 

特徴

港大橋を支えるトラス橋とカンチレバ ー

三角形に骨格を組み上げて構造を伸ばしていく仕組みの橋をトラス橋といいます。

トラス橋の構造のメリットは、吊り橋のような高い支柱や長いワイヤー等を必要とせず、比較的小さな部材で軽量な橋をつくることができる点です。曲げなどの外力に対しても粘り強く、目的に合わせて複雑な形状にも対応できるという特徴があります。有名なものとして、恐竜のような姿をした東京ゲートブリッジが挙げられます。

トラス橋のスパン長は概ね50~100mが一般的ですが、港大橋は510mもの長さを橋の中央に橋脚を立てることなく実現しています。この長大な橋を建設できたのは、カンチレバー方式(図1)のおかげなのです。

 

図1

 カンチレバーという言葉は聞き慣れない人が多いと思いますが、語源はラテン語の「cantus(曲がった部分)」と「levare(持ち上げる)」に由来しています。2)

つまり、釣り竿のように曲がった部材で片持ち式に持ち上げる構造を言います。開発者の名前からゲルバー橋とも呼ばれます。港大橋の場合はトラス橋でもあることから、カンチレバートラス橋という種類になります。

 

 カンチレバートラス橋のメリットは、橋の中央あたりに橋脚が設置できない場所にも架橋できる点にあります。港大橋が架かる大阪港は工業地帯で船の航行が多いため、橋の下は船が通れるようにスパンを長く、かつ高く開いている必要があります。橋のスパンを長くするだけなら吊り橋が有効ですが、高い支柱とワイヤー端を固定する箱型のアンカーレイジ(コンクリートブロック)が必要になります。

大阪港付近は飛行機が頻繁に離着陸するため、高い支柱を立てられず、工場の密集地帯であるためにアンカーレイジを設置する場所もありません。その点、カンチレバートラス橋は片持ちで支えるため、中央の橋脚や巨大な支柱、アンカーレイジも不要です。

 

③一括吊上架設_007

 

軟弱地盤を克服した巨大なケーソン基礎

 大阪港周辺は、地形的には淀川のつくる三角州および浅瀬が広がっており、砂泥がゆるく堆積した地盤は大変軟弱です。

図2のボーリング柱状図を見ると、地下30mまでN 値が一桁しかない軟弱な粘土が連続していることが分かります。

港大橋の建設には、このような軟弱な場所に巨大な橋を支える強固な基礎を設置しなければなりませんでした。

図2


 こうした課題を克服するために、港大橋の基礎にはケーソン基礎が採用されました。ケーソン基礎自体は珍しいものではありませんが、港大橋は全長が900mを超える巨大な橋であり、その重量を支える基礎もまた巨大にならざるを得ません。

設計計算すると、図3のように、縦横40m、高さ35mという、ジェット旅客機が3機は入るほどの大きさを持つ巨大な基礎になってしまいます。

そこで港大橋では、ケーソン基礎を中壁で分けて空間をつくることで、巨大でありながら軽量な基礎を実現しています。

 

図3
 巨大なケーソン基礎の建設中は、沈下が進むにつれてケーソン作業室内の気圧が上昇します。気圧が高まることで泥や水の浸入を防ぐことができますが、作業環境は著しく悪化します。そこで、気圧を抑えるために地下水を汲み上げながら工事を進めました。

また、ケーソン函内での掘削作業を機械化するなど、当時最先端の工法を開発・導入することで作業員の負担を軽減しました。5)

 

なぜ港大橋は赤いのか

空撮_AdobeStock_539986834
 みなさんは、赤白の縞模様に塗装された鉄塔やクレーンなどを見たことがあると思います。あの赤白模様は、飛行中の航空機に危険を知らせる目的で塗られています。航空法では地上高60m以上の煙突、鉄塔等で昼間の視認が困難なものには、昼間障害標識の設置が義務付けられており、それがあの赤白模様なのです。

港大橋の高さは81・5mありますから、航空法の規定により、本来なら赤白の縞模様に塗り分ける必要があります。しかし、全長900mを超える巨大なトラス橋の全体が赤白模様に塗られて設置されていたら、景観上、非常に奇異に映ることでしょう。

そこで阪神道路公団と運輸省航空局との協議の結果、当時としては例を見ない大胆な赤い塗装が行われます。

こうして、写真のように赤一色に統一された姿の橋が誕生したのです。

日本庭園の赤い橋が風景を引き締める役割があるように、赤一色のトラス橋もまた独特な存在感を放っています。

二度の田中賞が証明する港大橋の技術力

  当時、これだけ巨大なトラス橋は日本国内には存在しなかったため、設計にはさまざまな工夫や最先端の技術が駆使されました。

構造物内の応力分布を確認するため、当時コンピュータの発展とともに急速に普及し始めたFEM 解析が行われ、飛行機の設計のように風洞実験も行われました。これら先駆的な取り組みが高く評価され、1974年度の土木学会田中賞(作品部門)が授与されました。

また、1995年の阪神淡路大震災による影響で港大橋も耐震連結装置などに損傷が発生しました。そのため、耐震補強に免震・制振技術の導入や耐震計メンテナンスのコスト削減等に新技術が取り入れられました。これら功績に対し、2007年度に再び土木学会田中賞(作品部門)が授与されました。

さらには2024年に、今日までのさまざまな野心的な取り組みが卓抜であり、技術的にも歴史的にも価値が高いこと、そして地域の文化遺産としても重要であると認められ、土木学会選奨土木遺産にも認定されました。


 このように、数々の技術を結集して建設され、世界屈指の巨大な橋となった港大橋は、日本が世界に誇る土木構造物です。大阪の街を訪れた際には、ぜひこの港大橋をたもとから眺めてみてください。

 

参考文献
1) 地理院地図 https://maps.gsi.go.jp/
2) 天才英単語 https://tentan.jp/word/
3) https://ja.wikipedia.org/wiki/ゲルバー橋
4) 阪神高速道路公団編(1975):港大橋工事誌,土木学会
5) 港大橋開通50周年特設サイト 色褪せない赤が物語る、技術のバトン ~人とまちを繋ぐ架け橋として、これまでも、これからも〜
https://www.hanshin-exp.co.jp/company/skill/minato-bridge/outline/construction.htm

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