気象予報士・防災士の蓬莱大介です。
今回は、「液状化現象とは?」から始まり「過去に起こった事例」「対策」「地震保険」について解説します。日本の人口や財産のほとんどが液状化現象のリスクのある場所に集中していますので、他人事ではありません。
液状化現象とは?
一言で言うと、「地震が発生した際に地盤が液体状になる」ということです。
地下水を含んだ土が揺さぶられると、土の粒が水に浮かんだような状態になります。その後、土の粒は下の方へ沈み、水が上の方へと分離します。そうなると、地上の地面が沈んだり亀裂ができたり、マンホールなどが浮き上がることがあります。また、砂混じりの水が地上に噴き出すこともあります。こういった現象を液状化現象といいます。
なりやすい場所
地面に水分がたくさん含まれているような所になるので、海岸や川の近く、埋め立て地などが液状化現象のなりやすい場所です。日本の大都市は、ほとんどがこういった場所にありますので、多くの財産や人が液状化しやすい地域に集中していると言えるでしょう。
過去の事例
液状化現象が初めて大きくクローズアップされたのは、1964年に起きたM7.5の新潟地震です。この時には、新潟市にあった鉄筋コンクリートでできた県営アパートが目立った外傷がないにもかかわらず大規模に傾き、住めなくなりました。
また、地面の中の水分が砂粒と分離することで、地上に水が吹き出して浸水の被害も出ました。
1995年の阪神淡路大震災でも、人工島(埋め立て地)であるポートアイランドで大規模な液状化現象が発生し、港湾施設がまるで洪水が起きたかのような状況になりました。
2011年の東日本大震災の時は、震源地から遠く離れた千葉県や神奈川県を中心に液状化現象が発生し、地面の沈下によって水道管やガス管が亀裂し、ライフラインの復旧に何日もかかる大きな被害がでました。
対策
「地震の揺れの対策」は自分でできることとして家具の固定などありますが、「液状化現象の対策」というのは、どうしても自分だけではできず大がかりになってしまいます。
まず、ひとつには地盤を固めるというシンプルで大規模な方法があります。これは確かに安定しますが、費用が大きくなります。また、液状化現象が起きて地盤沈下してしまった所の地盤を改めて固めようとすると、固くなるけれどもさらに地盤が低くなってしまう可能性もあるようです。そうなると、今度は段差ができた所を何とかしないといけなくなりますね。
ほかには、建物の杭を地盤の深い所にある固い地盤に差すことで、建物を安定させる方法もあります。
ジャパンホームシールドのような地盤調査会社に依頼をすれば「液状化調査」して、その土地・建物に見合う対策を提案してくれます。液状化現象の対策に関しては、自分でやるよりも専門家に頼るのがベストでしょう。
地震保険
2011年の東日本大震災の際に、液状化による被害に対しての地震保険で問題が噴出しました。建物の見た目の損傷だけで保険の適用が審査されてしまうという事例です。
一部損壊判定と全壊判定では支払われる保険金額が大きく違います。
液状化による建物の傾斜を直すための杭を入れる工事に関して保険金だけではまかなえず、実費負担が大きくなってしまったということが戸建て住宅だけでなく、マンションなどの集合住宅でも発生しました。現在は、液状化現象による地震保険は、以下のような審査対象になっています。
保険の種類もさまざまですから、自分が入っている地震保険はこういった審査も含まれているか確認したほうがいいですね。マンションを購入される際にも、マンション自体でどういった保険に入っているか確認しておかないと傾いたマンションが直せないとなると資産価値がなくなってしまいますよね。特に、沿岸都市部や開発エリアでは液状化現象のリスクは大きいと言えるでしょう。
地盤サポートマップで液状化の可能性を知る
無料サイト「地盤サポートマップ」では、項目に「液状化の可能性」があり、全国250mメッシュで細かく色分けされて見ることができます。まず、これで自分の住んでいる地域がどういった地盤なのかを知ることから始めてみてはいかがでしょう。
さらに、その場所が埋め立て地なのか詳しく知りたければ、項目の「過去の航空写真」で1945年までおよそ10年ごとにさかのぼって見ることができますので、現在の航空写真と比較してみるのもいいと思います。
合わせて「揺れやすさ」という項目も見ておいて下さい。そして心配であれば専門家により詳細な調査を依頼して、どういった対策がその場所の費用対効果に見合っているか検討するといいでしょう。
地盤サポートマップはこちら:地盤サポートマップ