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【専門家に聞く】第3回 土砂災害は事前に対策できる
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気象予報士・防災士の蓬莱大介です。
普段テレビでお伝えする3分間の天気コーナーでは語りつくせない防災のことについて、みなさんと考えていくこのコラム。第3回は土砂災害についてです。梅雨の時期を前に改めて情報を整理しておきましょう。土砂災害に対して、少しでも不安に思われる方は情報の意味と入手方法を知っておけば、自分でも事前の対策が十分できますよ。

土砂災害は30年前より約1.5倍に増えている

激しい雨が増加気象庁と国土交通省によれば、土砂災害の10年ごとの平均発生数は、この30年間で約1.5倍に増えています。また、1時間に50ミリ以上の非常に激しい雨の回数も、約1.3倍に増えているというデータがあります。

日本の国土の約7割は山岳や丘陵地なため、傾斜地でも宅地開発されている所が多くあります。さらに、島国という周りを海で囲まれている地理的条件も加わり、雨量も世界的に見ても多い方です。そのため、土砂災害の年間発生数は、平均すると全国で約1,000件も発生しているのが現状です。

土砂災害の種類と近年起きた災害

近年起きた災害土砂災害には種類があります。近年の災害とともに整理してみましょう。

がけ崩れ(急傾斜地の崩壊)

特徴は、急な斜面、いわゆる裏山が大雨や地震によって崩れることで、都心でも起こりうるということ。近年の事例では、関東・東北豪雨(2015年9月)により栃木県内などで複数発生。神奈川県横浜市内(2014年8月)では、台風18号による大雨によって局地的に発生しました。

土石流

特徴は、川や谷筋で発生し、川底の石や土砂が集中豪雨などによって一気に下流へ流されること。速度はさまざまで、時速20~40キロで人家や畑を壊滅させます。広島市土砂災害(2014年8月)では、真夜中に市内で107件発生。伊豆大島の土砂災害(2013年10月)では、台風26号による大島町の集中豪雨により、三原山の中腹が幅950mにわたって崩落し、大規模な土石流が発生。長野県南木曽町(2014年7月)では、沢の上流で発生した土石流が沢付近にあった住み家を巻き込みました。

地すべり

特徴は、斜面の一部または全部が地下水と土の重さによって、ゆっくりと大規模にすべっていく現象で被害が甚大に広がるおそれがあるということ。新潟県上越市の雪解け地すべり(2012年3月)は、雪解けによる水分が山の斜面にしみ込んで雪の下にある地盤が緩くなり、幅150m長さ500mの雪を含んだ土砂が、時速15キロとゆっくりした速度で人家に押し寄せて被害をもたらしました。熊本地震(2016年4月)では、震度7の地震により火山灰でできた、もろい地盤の山の斜面が複数箇所で大規模崩壊し被害が発生。以上の土砂災害は「表層崩壊」と分類されています。

深層崩壊

特徴は、山の斜面の土だけでなく、その下にある岩盤ごと多量の雨により地下水圧の上昇と斜面の重力に耐えきれなくなって、山の地形が変わるほど大規模に崩落すること。紀伊半島大水害(2011年9月)では、台風12号により場所によっては2000ミリを超える雨量が解析され、その場所の半年分に相当する雨が降り、崩れた土砂が奈良県南部の集落を飲み込みました。

土砂災害のイエローゾーンとレッドゾーンって?

はじめにもお伝えしましたが、日本は島国で国土の約7割が山地です。国が把握している土砂災害危険箇所は、全国で約53万カ所もあり、東京都23区ですら約600カ所もあります。2001年に土砂災害防止法が施行され、「警戒区域」と「特別警戒区域」が都道府県で指定されるようになりました。指定されると、地域防災計画で体制を整備し、ハザードマップで住民に危険性を周知させる義務を負うとされています。宅地建物取引業法(宅建業法)においても、不動産取引において宅地建物取引業者は重要事項説明書を交付し説明しなければなりません。

「警戒区域」は、通称イエローゾーンと言われます。その区域では、住民の生命に危険が生じるおそれがある時に市町村がその住民に知らせたり、警戒体制を整備したりするように定められています。

「特別警戒区域」は、通称レッドゾーンと言われます。イエローゾーンよりも危険な場所で、指定された区域では、宅地開発する時に壁の設置や地すべり対策の工事をするなど防止策をとらなければなりません。すでにある家屋を増改築する際も、想定される土砂災害に対応できるか建築確認が必要になります。レッドゾーンは、場合によっては移転勧告も行うとされていますが、実際そこまでしたことはまだないようです。

公共工事の整備率はたった約25%!だからこそ自分でも対策を!

土砂災害危険箇所は全国約53万カ所ありますが、人家が近くにある対策対象場所の公共工事の整備率はたった25%程度です。

むかし宅地開発された所というのは、地盤が柔らかいから住宅造成しやすい所だったということもあるかもしれません。だからこそ、家それぞれでしっかりと調べて対策をとらなければならないのです。

危ないと予想された時には、事前に避難所に行くのがベストです。しかし、ほとんどの方は家の垂直避難になり、家の中でも崖から1番離れた部屋に避難するといった対策をとられます。また、大雨の際には、五感や地元の知見も大切になってきます。

川や井戸の水がにごる、斜面のひび割れ・小石の落下・水の噴出・木の不自然な傾き、山鳴りがするなどは、もう差し迫っている状況と考えてください。いざという時の広報車などによる防災無線は、雨の音で聞こえなかったこともあることを知っておいた方がいいでしょう。広島市土砂災害の時に前兆現象として、とりわけ大勢の方が覚えていたのは山の方からの土の臭いだったそうです。

土砂災害危険箇所かどうか簡単に知るには!

土砂災害危険箇所は、自治体の公表しているハザードマップを見て確認することができます。
また、「地盤サポートマップ」とパソコンで検索してみてください。防災情報の項目から土砂災害危険箇所を選択していただくと、赤いエリアが表示されます。googleマップと重ねているので拡大したりでき、非常にわかりやすいです。

「地盤サポートマップ」では、地図を最新の航空写真に切り替えられたり、その場所の過去の航空写真と照らし合わせたりもできますので、どういう地形か、どう宅地造成された場所なのかをリアルに知ることができます。ただし、警戒区域、特別警戒区域の指定については、各自治体のホームページ等で確認が必要です。

自然に近づいて暮らすということは、自然の恵みに近づくという素晴らしいことです。ただし、まれに災いにも近づくことになるということも認識しながら、自然と調和し幸せに暮らしていただきたいと思います。

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